自動公衆送信権とはなんだ2

公衆送信という言葉からイメージされるのはやはりあるものを不特定多数に送信する状態だろう。今回の判決で、法的な解釈はどうあれ、違和感を感じるのはその辺を無視して条文の言葉だけに機械的に当てはめて「これは公衆送信である」といいきるところだ。もちろん拡大解釈はあってはならないから裁判としては仕方ないのであろう。ようするに今まで想定されてないサービスについて無理やり目的の違う条文を当てはめようとしているからだ。それこそ拡大解釈ではないか?
JASRACは意図的に拡大解釈をさせているのではないか。条文の解釈ではなく、一般人に自分たちの言葉で「これは公衆送信である」と説明できるのか。
法知識や人脈の強みで法廷闘争に勝ち続けても、感覚的に不可解な理論付けや音楽ユーザーの利便を考えない姿勢では信頼、支持は得られない。


違和感の根本の原因は、JASRACがやりたいのは「ユーザーに自由にコピーさせないこと」あるいは「コピーするなら金を取りたい」ということで、しかしそれは無理だからそのサービスを提供する業者から金を取ろうとする、結果としてなんだか不可解な理論や条文を使わざるを得ないという、まわりくどいことをやるせいだ。「いやユーザーは関係ないよ、ほんとはユーザーから取りたいんですがね」、と取れなくもない判決文のなかのJASRACの残念そうな主張は読んでいると正直なところ、なんだか哀れだ。
ちょっと違うな。やりたいのは業者をつぶすことだ。金をとるにしてもある程度高額に設定される(業者が交渉で拒否したことからも明らか)、でなければ他のダウンロードサービスに影響があるから。管理できないところでコピーされたらJASRACとしてはたまったものではないと考えられる。裁判でも、なるべく私的複製がどうとかいう厄介な判断は避けたいのではないか。
iTMSにしてもカラオケにしてもいくらか音楽業界と繋がるのに、業界とまったく関わりなく複製サービスが成り立つというところが今までになくJASRACにとっては嫌なんじゃなかろうか。「なんとしても潰せ」、そんな声が聞こえてきそう。自分がその立場(権利を守ることで何千万も稼ぐような立場)ならそう思うだろうなと。


関係ないけど、もしこの商売がこの判決に従い成り立つとして、自分は何もしないのにどこかの誰かが何かをコピーしただけで*1お金が入ってくるなんて、夢のような商売だね、笑いが止まらない。

*1:何がコピーされたか細かく調べず包括的に契約する可能性も低くはない